撫子と大伴家持

2014年6月13日
 風雨の強い一日を過ぎ、ようやく庭にでた金曜日の朝、庭のカワラナデシコが可愛らしく咲いていた。花びらの切れ込みが深い、薄ピンクの撫子で、切れ込みのない種類の撫子に比べると慎ましやかな雰囲気だ。昨年秋に植え付けた株がどんどん広がり成長し、いつになったら咲くのかと楽しみにしていた。
 万葉集のなかで大伴家持がこの撫子をたくさん歌に詠んでいる。正妻である坂上大嬢に向けて詠んだ歌が多い。

わが宿に蒔きし撫子いつしかも花に咲きなむなそへつつ見む (巻8 1448)

わが家に撫子を蒔いたがいつ咲くだろう、花が咲いたらあなただと思って眺めるのに、といった意味だ。家持は撫子を野山からわざわざ庭に移し植えて楽しんだらしい(神野志隆光監修「別冊太陽 万葉集入門」平凡社 2011)。可憐な撫子の花を女性に例え、近くで愛でようと思う家持がなんだか可愛らしい。また撫子に例えられる女性はどんなに可憐で慎ましやかなのだろうか。
 実は家持は、坂上大嬢ではない先妻が植えた撫子を見て、偲ぶうたも詠んでいる。撫子に重ねた女性は一人ではないのかと思うと、複雑な気持ちになる。フィクションだろうが、昔読んだ少女漫画「初月のうた」(長岡良子 秋田書店 1990)に家持と複数の女性との関係は描かれていて、そこにも撫子は重要なものとして出てくる。
 撫子には、女性を彷彿させる美しさがあるのだろうか。私からすれば、ただただ可憐に素朴に咲いているだけの花なのだが。少なくても、私の周りに撫子を思わせる慎ましやかな女性はいない・・・。

かわらなでしこ

テーマ : ガーデニング
ジャンル : 趣味・実用

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bordeauxlyon

Author:bordeauxlyon
のびやかな筑波山の麓に在住。ガーデニングとワイン、旅が生きがい、そして趣味は美術館巡りと短歌です。
美しい花や自然、アートに満たされた日々で、心地よい豊かな日々を過ごしたいと思っています。
花と画家のなかでも大好きなクレマチス、マティスを冠して、日々の暮らしについて語ります。

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