月の輝く夜の絵本 いわさきちひろ「絵のない絵本」

スーパームーン2015928
2015年9月29日
 十五夜やスーパームーンを堪能した、虫の音も涼やかな秋の夜。我が家ではリビングから吹き抜けの窓を通じて、満月をみることができる。ソファに座ってゆっくりと月の位置が変わっていくさまや、薄雲に銀色の月が見え隠れする姿を見られることは、大変な贅沢だなと感じる。意図して設計したわけではないのに、丁度満月の頃に、こうした夜空を堪能できるのだ。
 そんなときによく思い出す、昔読んだ素敵な本、アンデルセンの「絵のない絵本」。月が孤独な青年に話しかける、世界中の様々な物語。夜空から眺めた、地球のあちらこちらで起こっているエピソードを語るのだ。なんて素敵なシチュエーションなのだろう。しかし、月が語りかけるそのエピソードは、ちょっぴりもの悲しく、寂しいものが多い。恋人や家族の死や別れ、孤独な人生。静かに、だが月の照らす銀世界に映えるような美しい物語ばかり。
 いわさきちひろさんがモノトーンのなかに描いた「絵のない絵本」。ちょっとエキゾチックなインドや中東、優雅なヨーロッパの街など、世界中をくまなくみた月が語る物語。「いまから百何十年も前に書かれたものですが、人の世の悲しみや真実が描かれていて、それは今の世も全く同じです。アンデルセンは神を信じていた人ですが、神の力ではどうにもならない人の不幸をリアルに描きだしているところも面白い」といわさきちひろは語ったという(別冊太陽 いわさきちひろ 子どもの心を見つめた画家 2007年 平凡社)。人の人生は不条理なものである。清廉潔白に生きたひとが安らかな死を迎えるわけではないし、親切なひとが幸せな人生を歩むわけでもない。モノトーンの中に、悲しみや寂しさを描いた、大人のための絵本を眺めながら、今夜も月と会話したい。元気に明るく生きることだけが、人生の味わいではないということが、切々と伝わってくる。
ちひろ 絵のない絵本1
参考:アンデルセン 山室静訳 いわさきちひろ画 絵のない絵本 童心社 1966
絵は上述、別冊太陽より拝借

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テーマ : 芸術・心・癒し
ジャンル : 学問・文化・芸術

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bordeauxlyon

Author:bordeauxlyon
のびやかな筑波山の麓に在住。ガーデニングとワイン、旅が生きがい、そして趣味は美術館巡りと短歌です。
美しい花や自然、アートに満たされた日々で、心地よい豊かな日々を過ごしたいと思っています。
花と画家のなかでも大好きなクレマチス、マティスを冠して、日々の暮らしについて語ります。

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