日常のしみじみした幸せ 久隅守景展

2015年10月31日
 国宝と聞いても以前はピンと来なかったが、最近はやはり国の宝って素晴らしい、と嘆息することが増えた。今回、サントリー美術館で久隅守景の「納涼図屏風」を見たときも、しみじみ良いな・・・と思った。
 愛嬌のあるひょうたんを棚作りにした木陰で、同じ方向を見て涼む一家。粗末なござの上で、静かに、のんびりと過ごしている。決して豊かではないであろうが、家族の穏やかな時間である。それが画面全体から、なんともしみじみと伝わってくる。
 久隅守景は最初、狩野探幽の弟子であった。のち、守景は狩野派から破門され、佐渡へ流されてもいる。自身の子供たちの不祥事が続いたりもして、エリート街道から隠遁生活を余儀なくされたという人生だったろう。展覧会は「逆境の絵師、久隅守景 親しきものへのまなざし」と銘打っており、まさに逆境を乗り越えたからこそ、ありふれた家族の光景に、しみじみとした幸せを見いだし、絵にすることが出来たのではないだろうか。
 がん終末期で意識のない妻を看取るご主人と語り合ったことがある。海外旅行に連れ立っていく華やかなご夫婦だった。そんな人生で最も印象的なことは、「何でもない、毎日の風景だね。ただ朝ご飯を食べて、なんとなく一緒にすごして。そんなありふれたことが、一番大切な時間だったね」ということだった。毎日のありふれた幸せ、その積み重ねこそが、人生で最も大切なことなのだと、その方から学んだ。
 ありふれた、穏やかな日常の一ページ。それをしみじみと描いたこの作品は、本当に国の宝というにふさわしいと思う。

久隅守景展


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テーマ : 絵画・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:bordeauxlyon
のびやかな筑波山の麓に在住。ガーデニングとワイン、旅が生きがい、そして趣味は美術館巡りと短歌です。
美しい花や自然、アートに満たされた日々で、心地よい豊かな日々を過ごしたいと思っています。
花と画家のなかでも大好きなクレマチス、マティスを冠して、日々の暮らしについて語ります。

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