鮮やかな色と直視 ロザリオの聖母

2015年11月26日
 三菱一号館美術館のプラド美術展を鑑賞した。絵自体は小さめのものが多いが、珠玉の作品が集まる展覧会だった。
 聖母を描く絵を見比べるのが好きだ。西洋絵画には、キリスト教あるいはギリシアローマ神話に基づく同一テーマを描いた絵画が多い。長い美術史のなかで様々な画家が、それぞれの技量や解釈をもって、描くその違い。それを、構図や色、アトリビュート(特定の人物を示す持ち物)などで読み解く面白さがある。最も、日本人にとって聖書、とくに旧約聖書やギリシアローマ神話の詳細を把握しながら読み解くことは、容易ではない。その中にあって、聖母像は母子の愛情と平穏という、古今東西普遍のテーマを描くものだから、日本人である私にもわかりやすいテーマということになる。
 この展示会でも、ムリーリョの聖母子像に心ひかれた。ぱっと眼に入る美しい赤と青の衣服。絹を思わせる艶やかで、品ある布地。ラピスラズリの青は、マドンナブルーとも呼ばれる、聖母マリアを示す高貴な色である。この絵では、青よりも分量がたっぷりな赤が印象的だ。赤は神の慈愛を示す、やはりマリアを示す色であるが、私はマリアを示すアトリビュートの白百合の白が好きだった。だが、たっぷりとした赤が印象的なこの聖母子像に、はっとさせられた。視線を聖母子に向ければ、二人ともなんとしっかりと正面を直視しているのか。まるでこれからイエスに起こる障壁と、それを乗り越える意志の強さを感じさせるかのようである。困難を直視し、乗り越える強さ、そんな意志をこの画面から感じた。白ではきっと感じ得ない、力強さが重厚な赤と青に満ちていた。
 スペインの赤は、イスラムからの国土回復運動で流れたキリスト教徒の血の色をも示す。ふたつの宗教が揺れる時代が未だ続いていることを、最近の哀しい事件で痛感させられる。ムリーリョは愛する子ども達を、次々とペストで喪いながら、美しく慈愛に満ちた絵を描き続けた。人を愛し尊重する心、困難に立ち向かう強い心はいつの世も変わらずあるはず。聖母子が求めた、隣人を愛する平穏な時間が、世界に満ちるよう願う。


ロザリオの聖母



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Author:bordeauxlyon
のびやかな筑波山の麓に在住。ガーデニングとワイン、旅が生きがい、そして趣味は美術館巡りと短歌です。
美しい花や自然、アートに満たされた日々で、心地よい豊かな日々を過ごしたいと思っています。
花と画家のなかでも大好きなクレマチス、マティスを冠して、日々の暮らしについて語ります。

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