妖艶な紅梅

2016年2月21日
 待ちかねていた庭の紅梅が今、満開だ。今年は特にたくさん開花しているし、心なしか、しべが優美に長く感じられる。その様子は、まるで手招きしているかのようでもある。

 ひさかたの月夜を清み梅の花心開けて我が思へる君 紀郎女(万葉集8-1661)
 
 月が美しい夜、梅の花も誘われるようにして開花しました。私も心を開いてあなたのことを想っています・・・。そんな意味だ。明後日に満月を控えた今宵も、月が冴え冴えと美しい。月夜に照らされ、我が家の梅も、ひときわ妖艶に美しく、匂い立っている。
 この歌を詠んだ紀郎女は、10歳も年下の大伴家持と恋愛関係にあり、様々な恋歌を交わしている。情熱的で、魅力的な女性だったのだろう。この歌には、心だけでなく身体も開き、あなたを想っているという解釈もある。なんてエロティックな歌だろう。万葉の昔にこのような歌を詠んだ大胆さ・・・いや、逆に万葉のおおらかな時代だからこそ詠めた、年上女性の誘惑の歌といえるかもしれない。
 紀郎女がもう一首、月と梅を詠んだ歌も、ちょっと拗ねたような可愛らしさがにじみ出ていて魅力的だ。

 闇ならばうべも来まさじ梅の花咲ける月夜に出でまさじとや(万葉集8-1452)

 闇夜ならばいらっしゃらないのもまあ、仕方ないかもしれないけれど、梅が咲くこの月夜にいらっしゃらないとは・・・。恋しい人を待ちわびる、ちょっぴり可愛らしい歌。だが、先の歌の解釈を踏まえれば、心だけでなく、身体も恋人を欲している・・・そんな妖艶ささえ感じてしまう。そばに来て、抱きしめて欲しいのに、あなたはいない・・・そんな切なさが、梅の香りと美しさに身もだえするように募っていく。決して深読みし過ぎではないだろうと思う。
 月に照らされ、梅の花咲く早春の夜。我が家の庭にも、梅が切なく、そして妖艶に香っている。
 
紅梅2016 1

テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

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bordeauxlyon

Author:bordeauxlyon
のびやかな筑波山の麓に在住。ガーデニングとワイン、旅が生きがい、そして趣味は美術館巡りと短歌です。
美しい花や自然、アートに満たされた日々で、心地よい豊かな日々を過ごしたいと思っています。
花と画家のなかでも大好きなクレマチス、マティスを冠して、日々の暮らしについて語ります。

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