2016年11月7日
市内のカフェでほぼ毎週、フランス語のプライベートレッスンを受けている。そのカフェで注文するカプチーノには、おしゃれなブラウンシュガーが付いてくる。私はコーヒーに砂糖を加えない。そしてけちんぼなので、毎回その個包装の砂糖を持ち帰る。ガラスの容器に入れてため込んでいたら、いつの間にか満杯になった。30個近くある。これからもため続けていくと思う。
ラ・ペルーシュというブラウンシュガーは、フランスメーカー、ベギャンセ社の砂糖だ。でこぼことした形、サトウキビで作られたコクと甘さ。グルメの国ならではの美味なる砂糖だ。個包装やそれをいれる箱には、カラフルなオウムが描かれている。いかにもサトウキビが作られる南の国のようなイメージ。形、味、包装と、全てがセンス良い。フランスではナンバーワンの砂糖生産企業だそうだ。品質の面でも、1889年パリ万博で金賞を受賞している。
大航海時代までは貴重だった砂糖。1653年にフランス、ナントに植民地であるアンティル諸島から運んだサトウキビを用いた砂糖工場が初めてできた。1800年代にナントは砂糖製造業で絶頂期を迎える。その過程で砂糖菓子会社がこのユニークな形を開発したようだ。その後、いくつかの砂糖会社が合併を繰り返し、1973年に甜菜糖会社ベギャンと、サトウキビ会社セ社が合併してベギャンセ社となり、現在に至る。
こうして考えると、たった一つの砂糖にも、世界の歴史と地理がぎゅうっと詰め込まれているようだ。昔は薬としても用いられていた砂糖。今は肥満の原因ともなり、むしろオフすべき食品のひとつになっている。たっぷりと摂取出来る故の、でこぼこゆがんだ構造が現代にはある。せめてこの一つのペルーシュをいただくときは、大航海時代から続く歴史と文化に思いを馳せて、味わいたい。

<参考文献>
鳥取絹子(2008):フランスのブランド美学 文化出版局
テーマ : フランス語
ジャンル : 学問・文化・芸術